変異ミトコンドリアを選択的に除去する ── 新しいモダリティで、根本的治療に挑みます
ミトコンドリア病は小児の先天性代謝異常症で最も多い疾患です。希少疾患ゆえに製薬会社の開発が進まず、患者さんとご家族は予後不良のまま取り残されています。
患者数が少なく、大手製薬の開発優先度が上がりにくい。
対症療法のみで、原因である変異ミトコンドリアDNAに働く薬はない。
臨床試験中の候補は代謝改善など対症的な作用機序に留まる。
生活の質が低下し、不幸な転帰に至る。
長期の介護・看護負担が患者家族にのしかかる。
原因そのもの──変異ミトコンドリアDNA──を認識し、変異ミトコンドリアだけを細胞から取り除く。遺伝子を書き換えるのではなく、「除去する」治療です。
PIP-TPPが変異ミトコンドリアDNAを認識し、マイトファジー(細胞が不要なミトコンドリアを自ら分解する仕組み)で除去して、細胞のエネルギー産生を回復させます。


| 安全性(非GLP毒性試験) | 投与条件 | 結果 |
|---|---|---|
| マウス | 単回/週2回×8回 | 毒性なし |
| カニクイザル(幼若) | 週2回×4週 | 毒性なし |
自社データ(順天堂大学との共同研究)。GLP毒性試験に向け、PMDAとのRS戦略相談・事前面談を実施済み。
出典:H. Nagase et al., Cancer Science, 2021, 112(12), 4834-4843/N. Koshikawa, H. Nagase et al., Biochem Biophys Res Commun, 2021, 576, 93-99/N. Koshikawa, H. Nagase et al., Cancer Science, 2021, 112(6), 2504-2512.
ミトコンドリアDNA変異によるエネルギー代謝の先天異常。小児期〜若年成人期に発症し、根治的治療法がありません。私たちはここから始めます。
ミトコンドリア病患者(約3,600人)の約3分の1がMELAS。その約8割が m.3243A>G 変異を持ちます。
米・英・独・仏・伊・西・日の有病者数(2024年、GlobalData)。2028年には約21,235人と予測されています。
ミトコンドリア病は小児の先天性代謝異常症で最も多い疾患。MELASはその代表で、進行性かつ予後不良です。
| 疾患名 | MELAS:Mitochondrial Encephalomyopathy, Lactic Acidosis, and Stroke-like episodes(ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群)。指定難病21「ミトコンドリア病」 |
|---|---|
| 原因変異 | ミトコンドリアDNA変異では m.3243A>G が最多(当社開発品CCC-018-TPPの標的)。正常と変異ミトコンドリアが細胞内に共存する「ヘテロプラスミー」が特徴で、変異の割合が上がると発症します |
| 症状・経過 | 小児期から若年成人期に発症し、脳卒中様発作、てんかん、筋力低下、難聴、糖尿病など多彩な症状を呈する進行性疾患。重症例では生命予後を著しく損ないます |
| 治療の現状 | 根治的治療法がなく、対症的治療に留まります(日本ではタウリンのみ承認)。臨床試験中の他社候補(13化合物)もいずれも対症療法で、原因であるミトコンドリアDNAの異常を取り除く治療法は開発されていません |
出典:MELAS Syndrome: Competitive Landscape, GlobalData, 2024/厚生労働科学研究「ミトコンドリア病の調査研究」/ミトコンドリア病診療マニュアル2023 ほか。患者数は概数です。
私たちの技術が届く範囲は、3つの段階で広がります。まず、治療法のない病気の患者さんへ。次に、同じ仕組みで治せる病気へ。そして将来は、より身近な病気へ。
原因であるミトコンドリアDNAの変化そのものに働きかける薬はまだありません。先行開発品 CCC-018-TPP で、ここから始めます。
リー脳症、MERRF、LHONなど、ミトコンドリアDNAの変化が原因となる病気は数多くあります。化合物は変異に合わせて設計できるため、同じ考え方で広げていけます。
MELASの原因変異は糖尿病の約1%、難聴の一部にも関わります。がん細胞でもミトコンドリアの変化が知られており、病的細胞を標的にした治療へ展開します。
患者数は調査会社の公開値(IMARC、DelveInsight)および学術文献(GeneReviews ほか)にもとづく概数です。
MELAS(m.3243A>G)以外にも、異なる変異を持つ多くのミトコンドリア病があります。同一のモダリティで根治薬の開発が可能です。
| 病名(略称) | 代表的変異部位 | 関与遺伝子 | 主な臨床症状・病態 | 当社の取り組み |
|---|---|---|---|---|
| MELAS(脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作) | m.3243A>G, m.13513G>A など | MT-TL1(tRNALeu(UUR)) | 脳卒中様発作、てんかん、感音性難聴、糖尿病、乳酸高値 | CCC-018-TPP 開発中 |
| MERRF(ミオクローヌスてんかん・赤色ぼろ線維) | m.8344A>G | MT-TK(tRNALys) | ミオクローヌスてんかん、小脳性運動失調、筋力低下、赤色ぼろ線維 | 開発予定 |
| Leigh症候群(LS) | m.8993T>G/C, m.10191T>C, m.13513G>A など | MT-ATP6, MT-ND3, MT-ND5 等 | 乳幼児期発症の中枢神経変性、乳酸アシドーシス、呼吸異常 | 開発予定 |
| NARP(神経衰弱・運動失調・網膜色素変性) | m.8993T>G/C | MT-ATP6 | 視力障害、末梢神経障害、筋力低下(LSとの重なり) | 開発予定 |
| Kearns-Sayre症候群(KSS) | mtDNA大欠失(常に数kb) | 複数遺伝子欠失 | 外眼筋麻痺、網膜変性、心伝導障害、成長障害 | — |
| CPEO(慢性進行性外眼筋麻痺) | 大欠失またはtRNA変異(MT-TK 等) | 複数 | 外眼筋・顔面筋麻痺、軽度筋症状、成人発症型 | — |
| LHON(レーバー遺伝性視神経症) | m.11778G>A, m.3460G>A, m.14484T>C | MT-ND4, ND1, ND6 | 青年期視力喪失、視神経萎縮。主に男性に多い | 開発可能 |
| Pearson症候群 | 大欠失(3〜8kb) | 複合体I, IV関連領域 | 乳幼児期発症、骨髄障害、膵外分泌不全、成長障害 | — |
| ND遺伝子群変異(Complex I defects) | MT-ND1–ND6 | NADH脱水素酵素サブユニット群 | 脳症・筋症の複合型(MELAS/LS様)表現型 | — |
多くの転移性がんでは全てのミトコンドリアが変異しています。同じ化合物(がん向け開発品 CCCh-560-TPP)で腫瘍細胞を破壊しつつ、周囲の疲弊した免疫細胞も回復させます。
変異ミトコンドリアがないため、ROSは増えません。
全てのミトコンドリアでマイトファジーが誘導され、ROSが過剰に蓄積して酸化ストレスに陥ります。がんでは内因性の抗酸化物質が枯渇しているため耐えられず、壊死した細胞から腫瘍抗原が放出されます。
緩やかに取り込まれ、マイトファジーにより変異ミトコンドリアが除去されます。疲弊した周囲細胞・免疫細胞が回復し、がんを取り巻く環境が変わります。
出典:J. Yao, H. Nagase et al., Int J Cancer, 2022, 152, 962-976/K. Tsuji, H. Nagase et al., Cancer Science, 2022, 113(4), 1321-1337/自社データ(順天堂大学との共同研究)
ミトコンドリアの異常は、脳・神経、筋、眼、耳、心臓、代謝・内分泌、腎、肝、消化管、生殖、血液・免疫など全身の病態に関わっています。糖尿病、難聴、加齢疾患、生活習慣病などへの展開を見据えています。
脳症/けいれん・発作/脳卒中様発作/運動失調/片頭痛/認知機能低下/末梢神経障害/パーキンソニズム
筋力低下/易疲労・運動不耐/筋けいれん/ミオパチー
視神経症/視覚障害/網膜色素変性症/難聴
心筋症/伝導障害/不整脈
糖尿病/乳酸アシドーシス/低身長/甲状腺機能障害
腎機能障害/尿細管障害/肝疾患/消化管運動障害/吸収不良/下痢
不妊/早発閉経/貧血/免疫異常
がん(悪性腫瘍)/加齢に伴う変化
ROSを下げる抗酸化剤とも、無差別に上げる酸化誘導剤とも異なり、変異ミトコンドリアを持つ細胞でのみ作用します。
安全に根本的病因を除去、全身をリフレッシュ
| 開発段階 | 作用機序 | 薬剤名 | 開発会社 | 国・地域 |
|---|---|---|---|---|
| 臨床第Ⅲ相 | Arachidonate 15-lipoxygenase 阻害/NQO1 活性化 | vatiquinone | PTC Therapeutics | 米国 |
| 臨床第Ⅱ相 | Sirtuin 活性化 | MB-12066 | Yungjin Pharm | グローバル |
| 臨床第Ⅱ相 | Prostaglandin E 産生抑制 | sonlicromanol (KH176) | Khondrion | EU・米国・グローバル |
| 臨床第Ⅱ相 | 可溶性 guanylate cyclase 活性化 | zagociguat | Tisento Therapeutics | 米国 |
出典:MELAS Syndrome: Competitive Landscape, GlobalData, 2024。ROS(活性酸素種):過剰になると細胞を傷つける酸化物質。T細胞の疲弊:免疫細胞が慢性的な刺激で働けなくなる状態。
当社の化合物は研究開発段階にあり、有効性・安全性は今後の臨床試験で確認されます。本ページの内容は医療上の助言を目的とするものではありません。